子供劇・児童劇というイメージを完全に覆す劇団「ラ・バラッカ」②〜子どもの芸術・文化の領域にも深く関係するボローニャ方式〜
ラ・バラッカという劇団は、「協同組合」として運営されています。つまり、俳優や演出家、舞台美術やプロジェクトマネージャ、全てのメンバーが組合員であり、よって労働者でもありながら経営の一端を担うという形で運営されているのです。
ボローニャ的な協同組合とは?
実はラ・バラッカが活動するボローニャでは、「協同組合」という組織形態で運営されている団体や企業が少なくありません。井上ひさしさんが丹念にこの街を取材して書いた『ボローニャ紀行』(2008年発行)でも、繰り返しボローニャの街の成り立ちと協同組合との深い関係が触れられ、いかにしてボローニャが中央政府とは一線を画した、“自治都市”であるのかが描かれています。
というのは、ボローニャの市民たちは、何か課題だと感じることを発見すると、仲間たちと自らの手で協同組合を作り上げ、実践的に行動して解決を計ってきたのだと井上ひさしさんは書いています。文化芸術都市ボローニャには、市内に数多くの劇場や映画館が位置していますが、これらの文化芸術事業もまた、自治体等の支援を受けながら、多くが社会的協同組合によって運営されています。
子どもの芸術・文化の領域にも深く関係するボローニャ方式
そしてこのボローニャ方式と呼ばれる社会的協同組合は、子どもの芸術・文化の領域にも深く関係しています。協同組合として運営されている「ラ・バラッカ」は、単なる興業劇団とは異なり、ボローニャという地域・自治体と密に協同しあう立場にあります。もちろん世界各国を旅して上演する国際的な劇団でもありますが、その基盤にはボローニャという地域の子どもたちへ、質の高い文化芸術を届けるという課題意識があります。
そのため、新しい演目を作り上げるプロセスでは、ボローニャ市の保育所や教育機関と連携して、俳優や制作陣が子どもたちの反応を直に確かめながら作品づくりを行うそうです。そして先に述べた通り、ラ・バラッカは自治体から提供された建物を劇場として使用していますが、そこには連日、市内の保育園や小学校から子どもたちが観劇に訪れます。正に、地域の子どもたちの文化芸術の質を担保する存在なのです。
子どもたちに、自分たちの手で優れた芸術を届けなければならないという課題意識は、ボローニャ地域に根付く自治意識に直結しています。同じ目的に向かって、自治体と緊密に連携し合う環境が整えられているからこそ、ラ・バラッカは子どもたちのすぐ近くで、子どものために果敢な芸術的挑戦を続けることが出来るのであり、それが、世界を牽引する子ども劇団を作り上げた大きな要因になっているのだと感じます。
トークセッション「劇団ラ・バラッカの作品づくり〜こども真ん中の芸術とまちづくり〜」
日伊櫻の会は、この度、劇団「ラ・バラッカ」を招聘し、つくば市(2024年10月20日及び21日)と国立市(10月19日)での公演を主催します。今回の来日公演にあたっては、10月20日(日)の公演後に、トークセッション「劇団ラ・バラッカの作品づくり〜こども真ん中の芸術とまちづくり〜」を開催します。
どのようにして、ラ・バラッカは乳幼児を対象とした作品作りをおこなっているのか。来日するアンドレア・ブゼッティ(劇作家・演出家・俳優)とカルロッタ・ズィニ(劇作家・俳優)に、ボローニャ市の子供・保育者・教育者など多様なアクターと連携したラ・バラッカの作品づくりについて詳しく伺う貴重な機会です。ゲストコメンテーターには、劇作家・演出家の佐藤信さん、乳幼児演劇研究科・明治学院大学教授の小林由利子さんを迎えます。詳細は、こちら(https://tey-tsukuba-2024.peatix.com)からご確認いただけます。講演だけでなく、是非、こちらのトークショーにもご参加ください。
つくば世界子どもシアター2024
シアター・フォー・アーリー・イヤーズ(Theater for Early Years /略称TEY)と呼ばれる演劇があります。 0歳からの小さな子どもたちのために創られた演劇です。最高の芸術鑑賞者である子どもたちから学び、彼らのためにつくられるのがTEYです。つくば世界子どもシアターは、今秋TEYをリードする世界の劇団を招致します。また近い将来、つくばから新たなTEYが生まれることを目指します。
■日時 2024年
10月20日(日)14:00開演(13:30開場)
10月21日(月)10:00開演(9:30開場)
■会場 つくばカピオホール
詳しくは、「つくば世界子どもシアター2024」公式ウェブサイトよりご確認ください。