日本初の現代影絵の専門劇団かかし座~飯田周一さんインタビュー①~

劇団かかし座は、1952年に創設された日本初の現代影絵の専門劇団です。数少ないプロの影絵専門劇団として、影絵の総合パフォーマンスを、日本のみならず、アジアやヨーロッパなど海外にも広く発信しています。「ハンド・シャドウズ・アニマーレ」という演目では、タイトルの通り、主に人の手だけで作られる様々な生き物のシルエットが、まるで本当に生きているかのように、物語世界を繰り広げます。舞台監督と共に出演も務めらる飯田周一さんにお話を伺います。
子どもと影絵―かかし座が牽引する手影絵の世界
― かかし座の公演は、子どもたちを対象にすることが中心でしょうか?
はい、子どもたちとまたその家族に向けたものです。うちの事業においては、実施数としては保育園や幼稚園での公演の方が多いかもしれないですが、小学校での公演が大きな柱になっています。
― 小学校の体育館などで見る舞台って、すごく覚えているものですよね。毎日ルーティン化した学校生活の中での、非日常の時間は記憶に残ります。作品づくりをされるときは、子どもたちに届けるという点で、特別意識されることはありますか?
正直、子ども向けということを意識して作ることはほぼありませんね。小さい子に見せるからといって、簡単な言葉を多く使用するとか、そういったことはやりませんし、大人の方が見ても楽しめるような作品づくりを心掛けています。

― 確かに今回上演いただいた「ハンド・シャドウズ・アニマーレ」は、私たち大人もその世界に魅了されました。どこか懐かしい、心があったまる気持ちになりました。小さい子どもたちも、熱心に影絵に見入っていましたね。
子どもたちに、っていう意識はあまりないのですが、影絵には子どもたちを惹きつける特殊な力があると思っています。それは、影って基本的に黒いじゃないですか。色がない。「ない」、ということは、子どもたちは何色のものでもそこに思い浮かべることが出来る。影絵にはそういう自由さがあると思うんです。
― 面白いですね。それに影って、子どもたちにとっても、とても身近なものですよね。
そう、小さい頃からずっとくっついてきたものであり、当たり前のものとして普通にそこにあるもの。ですが、それをしっかり意識して見ることはあまりないでしょう。でも、ちゃんと見てみると、実はそこに親しみがある。影を見れば、その影を何が作っているのかが分かる。色も付いていないのに、なぜか模様まで見えてくる気がする。そうやって影の中には、とっても自由に絵が描けるんです。多分その点が、例えストーリーが分からなくても、じっと影を見入る2歳児とか1歳児とかの心理にあるのかなと思います。
― 「ハンド・シャドウズ・アニマーレ」では、名前の通り、手で様々な動物やその動きを表現されていました。かかし座では切り絵を使った美しい影絵もありますが、この演目では、切り絵よりも手で作り出す影に主軸を置いたのは何故でしょうか?
手は、誰もが一番身近に使えるものです。子どもたちもすぐ自分の手を重ねて、真似してみようとする。だから反応が早いんですね。切り絵を使うと、そこにはすでに完成された形があるので、やっぱり手のほうが自由度が広いんです。その分、誰もが参加しやすい、入り込みやすいと言うのがあるかもしれないです。それに、子どもたちが好きな指遊びと、とても近いものがあります。

― 「ハンド・シャドウズ・アニマーレ」は海外でも公演されたそうですが、その際はどのような反応でしたか?
2009年にシュヴェービッシュ・グミュントで開催された「国際影絵劇フェスティバル」に参加して、そこで「ハンド・シャドウズ・アニマーレ」の前身になる作品を上演しました。その時は、本当にスタンディングオベーションで大絶賛を頂きました。スペインとオランダのフェスティバルからも、うちに来てくださいとオファーを頂き、更にそれがブラジルの公演にもつながったりと…。
― すごいですね!ヨーロッパ始め世界の人々にもとても高く評価されたんですね。何がそこまで評価されたのでしょうか?
そもそも、手影絵を使ったパフォーマンス、つまり僕たちのようにアンサンブルでダンスパフォーマンスをしたり、手影絵で一本のお芝居を作ってしまうというようなパフォーマンス自体が、海外にはあまりないんです。その新鮮さがあったと思います。もちろん、ソロで手影絵をされている方もおられますが…。ヨーロッパの児童演劇のフェスティバルに参加させていただくと、やっぱり人形劇が圧倒的に多いなと感じますね。アジアにも多様な影絵文化がありますが、基本的には人形影絵です。手で作る影を主として上演するものではありません。
― すると、手影絵を使って舞台作品を作るという点では、かかし座が草わけということでしょうか…。
うちが引っ張っていると思います。だからこそ、もっといろんな方に知ってもらいたい、子どもたちに楽しんでもらいたいなというのがありますね。(つづく)
いいだ・しゅういち
1992年、劇団かかし座入社。俳優として、「星の王子さま」、「宝島」、「オズの魔法使い」等出演。手影絵作品「Hand Shadows ANIMARE」の制作より関わり、20カ国以上での公演実績がある。現在は企画や制作にも関わる。