日本初の現代影絵の専門劇団かかし座~飯田周一さんインタビュー③~

「劇団かかし座」は日本初の現代影絵の専門劇団です。「劇団かかし座」は、海外の劇団との交流もあり、子どもたちが演劇作品に示す反応や、演じる側の捉え方など、様々に興味深い点を、「劇団かかし座」の飯田周一さんに引き続き語っていただきます。
― 飯田さんは現在、ヨーロッパの公演担当もされているとのことですが、「ラ・バラッカ」とも交流があったんですよね?
ええ、2019年2月下旬から3月初頭にかけてボローニャ近郊で公演をしたのですが、その際にラ・バラッカの劇場にも訪れました。児童演劇の研究者でいらっしゃる小林由利子先生、花輪充先生のお二人からお声がけいただいたことがきっかけです。
イタリアには、レッジョ・エミリア・アプローチという教育法があるのですが、その中では影絵も重要なポイントだそうで、イタリアで幼児教育をしている保育の現場の方たちに向けに、ワークショップをしてほしいと依頼を受けました。
― そうだったんですか。小林先生は、コムーネでもご寄稿いただいています。ワークショップの反応はいかがでしたか?
すごい興味を持たれましたね。手で何十種類もの動物を作れること、手影絵の動物を使ってお話を作るということに対して新鮮味を感じられたようです。この際に、ソロパフォーマンスを「ラ・バラッカ」の建物の中でやらせてもらいました。ただこの公演は、俳優やディレクター、プロデューサーといった関係者の方々向けだったので、結構緊張しました。ラ・バラッカが主催する「マッピング」という国際フェスティバルの期間中に実施したんですよ。

― 「マッピング」は、0歳から6歳までの子供たちを対象とした舞台芸術のリサーチプロジェクトですね。様々なヨーロッパの劇団が参加されていたのかと思いますが、飯田さんも色々と作品をご覧になったんですか?
ええ、何作品か拝見しました。もちろん、面白いと感じたものもたくさんあったんですが、分かりにくいなと思いましたね(笑)。
例えば、光と影の効果を使いながら、赤と青のインクが混じり合って、違う色になって、ただそれを繰り返すだけのような。その合間にダンスがあるというだけ。でも、一緒に見ていた花輪先生や小林先生は、学術的な観点から作品を鑑賞されていました。
― ヨーロッパと日本とでは、作品の作り方が随分違うと感じられたのでしょうか?
そうですね。マッピングで拝見した作品は、子どもたちの感性に対してどんなアプローチが出来るのか、っていう部分が軸なのかと思いました。一方で僕たちは、とにかく子どもたちに楽しんでもらおうっていうところが中心なのかなと。
― 確かに2021年の「イタリア・ジャパン・キッズシアター」で寄せられたアンケートでも、かかし座の作品へは、参加した誰もがみんなが楽しいというコメントが中心でした。一方、ラ・バラッカの作品は、面白かったという子どもたちもかなりいましたが、難しかったという声もあって、二極化する印象を受けました。
二極化しても、それがいいとか悪いとかじゃなくて、一つの芸術作品であるということだと思いますね。ですけど、厳しいところは、子どもって一度飽きたら、もうなんか飽きちゃったみたいな感じになるじゃないですか。ただ、海外の作品を見ていて思うのは、飽きた反応をすることもあるけれど、やっぱり気が向く瞬間があって、すると、すっとまた集中してくる。そうした子どもたちの揺らぎの部分も含めて、考えてるのかなとも思います。
― かかし座としては、その辺り、どのように考えていらっしゃるんですか?
うちは、もうずっと面白いものを出し続けようと思ってます。ですので、花輪先生がうちの作品を見て、最初に一言、「お腹いっぱいだね」とおっしゃいました。本当にいいものをアピールすることばかりなので、ちょっと抜く部分があってもいいよ、というようなことをおっしゃいました。そういう作り方もあるんだなって思いましたね。(つづく)
いいだ・しゅういち
1992年、劇団かかし座入社。俳優として、「星の王子さま」、「宝島」、「オズの魔法使い」等出演。手影絵作品「Hand Shadows ANIMARE」の制作より関わり、20カ国以上での公演実績がある。現在は企画や制作にも関わる。