日本初の現代影絵の専門劇団かかし座~飯田周一さんインタビュー④~

日本初の現代影絵の専門劇団かかし座~飯田周一さんインタビュー④~


日本初の現代影絵の専門劇団である「劇団かかし座」の飯田周一さんのインタビュー最終回は、コロナ禍や戦争に揺れる世界の中での国際交流や子どもの文化について語っていただきます。

― 「ハンド・シャドウズ・アニマーレ」でも、次から次に新しい登場人物や物語が展開して、ずっと高揚し続けながら、あっという間に時間が過ぎました。

海外の劇団と交流することで、新たに気づく視点も多くあるのだと分かりました。そうした中で、海外との往来が難しくなったコロナの影響は大きかったと思います。

ええ、海外での公演は、すべてなくなってしまいましたから。2021年も、韓国の人形劇団とコラボレーションした日韓合同企画の作品を、日本と韓国の双方で公演する予定で、会場も決まっていたのですが、全部出来なくなってしまいました。

ただ、コロナ禍の中で新しいコミュニケーションも生まれています。EU・ジャパンフェスト日本委員会という、日本のアーティストをヨーロッパに繋ぐ活動をされている団体があります。そちらが、かかし座がオンラインで作品を発信していることを聞き付けてくださって、ヨーロッパに向けて影絵のパフォーマンスを発信して欲しいと連絡がありました。

実はコロナになってから、Youtubeのかかし座公式チャンネルに、200本近くの映像をアップしてきました。舞台部と、撮影・編集を担当する広報、様々なチームが一緒に作り上げてきた成果です。実際にヨーロッパ向けにオンラインで公演したら結構反応があって、それがきっかけとなり、今年の5月(2022年)には、ルクセンブルク、リトアニア、ドイツ・フランクフルトでツアーを開催する予定です。

― そうなんですか。ヨーロッパでは今、ウクライナの戦争が生じて、大変な状況にあります。

ええ。ここ最近、ずっとリトアニアの方々と頻繁にメールをやり取りしてるんですが、やはりウクライナと立場的にも似ている国でもあり、次はもしかしたらバルト3国かもしれないという不安もあって。どうなるかまだ分からないですが、ただやはり、こういう状況の中で、子どもたちに楽しんでもらうコンテンツがなくなってしまうのは本当に辛いです。

― こういう状況になって、国際文化交流や子どもたちの文化の重要性を考えることが、尚更増してきているように感じます。

すごい増していると思いますね。コロナや、またウクライナの戦争が生じている中で、僕は一体何をしていかなくちゃいけないのか、って考えます。でも、こういう時だからこそ、僕らはなるべく現地に行って、子どもたちに楽しんでもらいたい、公演を見てもらいたいと思っています。出来ない場合も、ただ出来ないではなく、何か出来ることはないだろうかっていうことを考えたいと思ってます。

― 最後になりますが、飯田さんの今後の抱負をお聞かせいただけますか?

かかし座は、今年70周年なんですよね。僕は今年で入社30年です。月並みですけど、やはり、影絵の楽しさを本当に世界のいろんな国の人たち、子どもたちに知って欲しいと思っています。

もう一つは、やっぱり実演家として、俳優としての仕事を継続したいですね。やっぱり基本的には、演じるのが好きなので。そして演じないと分からない部分がある。今、幼稚園・保育園で「赤ずきん」の作品をやっていて、僕は狼を演じているんですが、子どもたちの引きつけ方、楽しみ方っていうところで、毎回とても勉強になるところがあります。この現場感は、絶対なくしちゃいけないなって思っています。

いいだ・しゅういち

1992年、劇団かかし座入社。俳優として、「星の王子さま」、「宝島」、「オズの魔法使い」等出演。手影絵作品「Hand Shadows ANIMARE」の制作より関わり、20カ国以上での公演実績がある。現在は企画や制作にも関わる。

THEATER – 演劇