「子どもたちから、私たち大人が学ぶ」レミダの取り組み➄

「子どもたちから、私たち大人が学ぶ」レミダの取り組み➄


イタリア、エミリア=ロマーニャ州で、地域の廃棄素材を活用して、子どもの教育素材とする「レミダ」。レミダの取り組みは世界に広がっています。ポスト・コロナ時代にどのようにして活動の幅を広げているのか、お話を聞きます。

/ 取材・文 多田 亮彦

―― レミダから学ぼうとする人たちが、自分の暮らす地域を変えるために、どのようにサポートしているのでしょう?

正式にレミダ・センターと呼ばれるものは、イタリア国内に7つ、海外に6つ、合計13の拠点があります。しかし、ここ5~6年の間、センターを増やしながら質を高めることが非常に困難だったため、正式なレミダ・センターの新規開設は現在中止しています。それにもかかわらず、レミダを作りたいという多くの要望が国内外から寄せられているので、どうしても自身の地域にレミダを作りたいと考える人々には、「レミダにインスパイアされたものを開設してください」と伝えています。「レミダ」というブランドを使用してもらうことは出来ませんが、活動の開始と成長のために、さまざまな形で私たちは支援します。またレミダ・センターでは、常に最新の情報を得るために、他のセンターの人たちと実際に会ったり、オンラインで交流しています。私たちは、お互いのことをよく知っていて、友達のようなものです。

Covid-19 は、私たちのコミュニケーションを変化させることに一役買いました。Covid-19 以前は、国内外にあるレミダ・センターにそれぞれ個別に訪問し、また彼らにも個別にレッジョ・エミリアに来てもらっていたので、全てのセンターが一堂に会する機会はありませんでした。しかし、Covid-19 が始まってからは、他の拠点の人たちの動向を知るために、全センターで、3~4ヶ月に一度のペースでミーティングを行うようになりました。オーストリアやブエノスアイレスの人たちとの再会もありましたよ。こうした多様性が、私たちをより豊かにしてくれました。例えば、スウェーデンのレミダはとても小さな施設ですが、森の中にあって木の香りがします。一方、ブエノスアイレスのレミダは巨大な組織で、多くの保育園・学校が参加しています。このように規模や性格もそれぞれに異なる様々なレミダ・センターの活動を聞くことで、興味深いミーティングが行われています。なぜなら、異なる規模や取組の中にも、子どもたちへのアプローチの仕方や、手にした素材で何が出来るのかという可能性を子どもたちに伝えるためのプロセスなど、そこには共通する軸があるからです。

政治家や政府が、世界中の保育園や学校、子どもたちのことを、もっと真剣に考えてほしいと思います。

―― Covid-19 は、私たちのコミュニケーションや学習のプロセスを変えました。皆さんのように、この変化をポジティブに利用し、新しい関係を作っていくことはとても賢明なことだと思います。私たちもこうしてインタビュー出来るのは、オンラインでのコミュニケーションが普通になったことが大きく影響しています。それでは最後の質問とさせてください。あなた自身の将来への展望や夢を教えてくださいませんか?

政治家や政府が、世界中の保育園や学校、子どもたちのことを、もっと真剣に考えてほしいと思います。教育は大きな問題です。一方、政治家や政府が、フォーマルな教育やインフォーマルな教育で何をすべきかを理解するために、十分な時間を費やしているかといえば、現状は違うと言わざるを得ません。私たちが住んでいる世界は、過度な資本主義に基づいて、多くのことが金銭的な尺度で測られています。こうした社会では、子どもたちは重要と見なされないことがしばしばあります。なぜなら、子どもたちは投票しないし、物も買わないからです。

しかし、政治家や政府は、学校や教育、保育をもっと大切にする必要があります。なぜなら、子どもたちが話したり、物事について考えたりするのを聞くと、私たち大人は、とても多くのことを学ぶことが出来るからです。子どもたちからは、たくさんの美しい視点を得ることが出来ます。そのための時間がもっとあれば、より多くのことを大人たちは学ぶことが出来ます。

保育園や学校は、保育士や教師が子どもたちに指示や情報を与える場所ではありません。子どもたちの考えを聞く場所ですし、子どもたちから、私たち大人が学ぶ場です。そうであるべきだと思います。そうした考えが当たり前の社会になること、それが私の夢です。(終わり)

エロイザ・ディ・ロッコ
レミダ・プロジェクト リサーチ&トレーニング担当。広告会社でアートディレクターとして働いた後、2012年よりレッジョ・チルドレン・ファウンデーションに参画。モデナ・レッジョ・エミリア大学で幼児教育分野において博士号取得。47歳。2人の娘の母。