イタリアで暮らす人に聞くイタリアの夏休み③~フィレンツェ~
ーイタリアのバカンス、どのくらいの期間あるのでしょうか?
イタリアのバカンスは、まず長いです。3ヶ月ちょうどぐらいか、それ以上か。私は、イタリアで観光ガイドをやっているのですが、6月半ばぐらいになって、「イタリアの学校はもう夏休みなんですよ」って、日本からのお客さんに言うと、毎回驚かれるんです。それで、「いつまで夏休みかご存知ですか?」って聞くと、「9月?」って。「そうですね。9月の半ばまでなんですよ」って言って、2度驚かれます。
イタリアでは、1950~70年代ぐらいまでだと、お母さんが家庭にいるケースが多かったようです。それで夏のバカンスともなれば、1〜2か月の間、田舎や海で安く部屋を借りて、おじいちゃん、おばあちゃん含めてお母さんと子どもたちとで移住する。お父さんは仕事があるので町に残って、週末に時々合流する。8月になると、お父さんも晴れて1ヶ月夏休みが取れるので、みんなで一緒に過ごす。それが、イタリアのよくあるバカンスだった時代があったそうです。
ただ現在は、海辺の宿泊施設も、設備が整った所が増えて金額が高くなっていることもあり、借りるとしても、せいぜい2週間といったところです。
ーフィレンツェの人たちは、どこでバカンスを過ごすんでしょうか?
フィレンツェは、内陸で海に面していないので、その分バカンスは海で過ごす人が多いようです。
滞在先の海として典型的なのは、遠浅の浜辺がずっと続くヴィアレッジョ(トスカーナ州ルッカ県)です。ただ私自身は、夫の親戚がリヴォルノ県(トスカーナ州)の海辺の町にいる関係もあって、リヴォルノより南の海によく行きます。そちらは、砂浜だけではなく、岩場や小さな入り江も沢山あるので、海としてはこの当たりの方が面白いんです。
バカンスシーズンになると街から出ていく人も多いので、フィレンツェの住宅地の様子も変わります。まず、イタリアって、路 上に駐車するじゃないですか。その車の数が、明らかに少なくなります。あとは、ベルシアナ(persiana) と呼ばれる雨戸が、ずっと閉まっている家も増えます。お店も、個人商店なら2週間とか1ヶ月、夏休みをとる店舗が多いですね。観光客の来るところは、お店の夏休みは8月15日前後だけ、という傾向になってきましたが、それはここ20~25年のことです。
ー例えば日本の花火のように、フィレンツェにも夏の風物詩はありますか?
夏のイベントは色々あります。市町村や教区教会、市民団体などが主催して夏祭りや屋外映画など、主に夜の催しです。花火も、日本ほどではないですが、こちらにもあります。キリスト教のカレンダーで毎年6月 24日は、フィレンツェの守護聖者である洗礼者ヨハネ、イタリア語だとサン・ ジョバンニ・バティスタの日なんですが、この日に恒例の打ち上げ花火があります。元々はかがり火などで聖夜の街を明るく照らしていたのが、ルネサンス頃から火薬が利用されるようになったようですね。当初は打ち上げ花火ではなく、大きな風ぐるまに花火を組み込んだ装置だったようです。16世紀に描かれた壁画に、町の中心のシニョーリ広場上空で、ポッポっと火花が散ってる様子が描かれています。現在では、町の南側の丘の上にあるミケランジェロ広場、町のパノラマも楽しめるテラスのようなあの広場から、花火が打ち上げられるんですよ。フィレンツェ人であれば、見に行く人が多いですね。建物の上階に住んでいる人は、友人達を誘って夕食会を開きながら楽しみます。それはやっぱり、夏の一番のイベントですね。(つづく)
(日伊櫻の会発行会報誌コムーネ2022年9月号より転載)