世界が注目するイタリアの幼児教育アプローチ「レッジョ・チルドレン」と「レミダ」①~レッジョ・チルドレンとは~
「レッジョ・チルドレン」とは
レッジョ・エミリアは最近の日本では、チーズの産地としではなく、レッジョ・チルドレン・アプローチという幼児教育の方法でより注目されているかもしれません。レッジョ・チルドレン・アプローチで重視されるのは、画一的な教育ではなく、アートを中心として、子どもたちの自由な発想を伸ばしていくことが重要視されています。
保育所などに用意される「アトリエ」という場所や、子どもたちの探求をサポートする「アトリエニスタ」と呼ばれるアーティストたち、またドキュメンテーションといわれる日々を記録する方法などが特徴的だといわれています。常にカメラ片手で子どもたちと接し、その日々を記録するそうです。レッジョ・チルドレンのエッセンスについて、幼児教育の専門家、東京大学教授の秋田喜代美さんはこう述べています。[1]
これからの社会は、急激に社会が変動する不確かな時代といわれています。そこで子どもたちに求められる学びの哲学をレッジョ・エミリアは示しているとも考えることができます。専門家とは何かへの一つの姿も示しているのではないでしょうか。知識という片方のポケットだけではなく、不確かさを問うもう一つのポケットをもつことがどれだけ大事にされているでしょうか。子どもの学びだけではなく、これから保育者に求められる専門性もレッジョ・エミリアの哲学は問うていると考えられるのではないでしょうか。
どうやら、子どもたちに正解を教えるのではなく、子どもたちの「問い」を伸ばしていく姿勢に、レッジョ・チルドレン・アプローチの本質があるようです。正誤の定まったものだけが存在するのではない。事物の意味や形が変化していくという考え方は、今回の記事で紹介するレミダが唱える「アンストラクチャード・マテリアル」という考えにも共通しているように思います。次回以降でレミダのコーディネーターであるラウラさんにお話をしていただいた、レミダ設立の経緯や運営体制、そして様々な実践について紹介していきたいと思います。
レッジョ・チルドレン・ファウンデーション
レッジョ・エミリア・アプローチを世界に広めるべ く 2011 年 に 設 立 さ れた非営利団体。レッジョ・エ ミ リ ア・ ア プ ロ ー チでは、主に保育園・幼稚園・小学校など初等教育を 対 象 に 教 育 方 法 の 研究・実践がなされており、子どもたちが持つ多様な個性を、絵画・彫刻・演劇など象徴的言語を日常生活の中で使いながら育むことを目指す。主なプロジェクトに、「レミダ」の他、コミュニティを活用した教育改善プロジェク ト「 エ デ ュ カ 」、 子 どもの教育への貢献を顕彰する「ローリス・マラグッツィ賞」などがある。
[1] 太字筆者『発達』156号「なぜいまレッジョ・エミリアなのか」 https://www.minervashobo.co.jp/book/b375733.html