世界が注目するイタリアの幼児教育アプローチ「レッジョ・チルドレン」と「レミダ」②~レミダとは~

世界が注目するイタリアの幼児教育アプローチ「レッジョ・チルドレン」と「レミダ」②~レミダとは~


イタリア北部エミリア・ロマーニャ州の都市、レッジョ・エミリア。レッジョ・エミリアは、レッジョ・チルドレン・アプローチという幼児教育の方法で、昨今注目を集めています。レッジョ・チルドレンの取り組みの中でも、レミダと呼ばれるアートと子どもと地域を結び付けた取り組みが特徴的です。今回は、レミダを訪問し、その様子を見てきました。

レミダ誕生の経緯

レミダとは、レッジョ・チルドレン内の組織で、地域の企業と連携して、廃棄される予定のサンプル品やつかわれなかった素材を集めて教育目的に再利用する活動を行っています。

レッジョ・エミリア市内の公営保育施設では、1970年代から幼児の両親が自分たちの仕事場から廃棄予定の素材を持ち込み、先生たちがそれらを教育の現場で利用するという実践があったそうです。1990年ころ、当時のレッジョ・エミリア・プレスクール・インファント・トドラー・センター長だったセルジオ・スパッジャーリさんがイギリスを視察した際、民間で運営されるリサイクル事業を見てレミダの活動を着想し、地域で廃棄物収集事業を手掛けるイーレン(Iren)と協力して、地域の企業から廃棄される予定のものを集め、幼児教育向けに提供する取組みを始めました。

当初は30社ほどの企業だけでしたが、いまではイーレンが廃棄物管理するレッジョ・エミリア、ピアチェンツァ、パルマから200社以上が参画しているそうです。イーレンが週一回レミダ用の集荷を行っています。利用対象は、当初は乳児保育所と幼児学校に限定されていたが、現在では乳児保育所から大学までの教育機関、その他文化・福祉関連機関など350以上の組織が会員となっています。会員費は機関ごとに年間40ユーロがかかります。

ミュニシパリティと企業、レッジョ・チルドレンが運営するレミダ

レミダの運営には3つのステークホルダーがかかわっています。ひとつ目は、ミュニシパリティ、つまりレッジョ・エミリアの行政です。市の乳幼児教育行政を担うプレスクール・インファント・トドラー・センターが担当部署になります。次に、イーレンです。イーレンはイタリアのユーティリティ企業で、電力、地域暖房およびガス用の熱エネルギーの分野、および水道サービス、廃棄物処理などの環境サービスを主事業としています。

最後にレッジョ・チルドレンです。運営の実務は、レッジョ・チルドレンの3名のスタッフが中心になって行っていて、運営全般を担当しワークショップの調整などを行うラウラさん、アトリエ二スタであり後述するアンストラクチャード・マテリアルのリサーチャーでもあるエロイサさん、収集後のマテリアルの整備や提供時の管理を行うシルビアさんがレッジョ・エミリアのレミダを運営しています。フルタイムで働くのはエロイサのみで、ラウラとシルビアはパートタイムで働いています。

レミダが開いているのは、毎週火曜と木曜の午後(3時から6時)と水曜と金曜の午前(9時半から12時半)で、利用するには予約が必要です。日本だと毎日開けなければいけないと考えてしまいそうですが、レミダの皆さんはそういう無理はしないようです。生活に合うように活動や働き方がデザインされていると感じます。



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