日伊で活躍する絵本作家が影響を受けた日本人アーティスト~絵本作家フィリップ・ジョルダーノ②~

日伊で活躍する絵本作家が影響を受けた日本人アーティスト~絵本作家フィリップ・ジョルダーノ②~


フィリップ・ジョルダーノさんは、日伊で活躍する絵本作家。影響を受けた本やアーティストについて話を聞きます。

ーフィリップさんは子供時代、どのような本が好きでしたか?

絵本に携わる仕事をしているものの、興味深いことに、幼少期は多くの絵本を読みませんでした。両親は多くの絵本を買い与えてはくれませんでしたし、私も絵本が欲しいとは両親にお願いしませんでした。変わりに、植物についての科学本を買って欲しいと頼み、それらを繰り返し読んでいました。実は、絵本よりもそうした本の方が好きだったんです。だからかもしれませんが、最近は、ノンフィクションの本、特に自然科学について扱った本に携わることにとてもやりがいを感じています。昨年、イギリスで出版された、”I Ate Sunshine for Breakfast”と言う絵本は、植物の多様な働きについて、様々な観点から書かれたノンフィクション作品ですが、このイラストを手がけました。日本でも今年、翻訳出版されました。(日本語版『朝ごはんは、お日さまの光!』徳間書店)

絵本のジャンルで見ても、私はエンツォ・マリやイエラ・マリの作品がとても好きですが、彼・彼女は自然科学を感性的な視点から描いているという点でノンフィクションに通じるところがあります。小さな頃から好きだった絵本に”La Mela e La Farfalla”(日本語版『りんごとちょう』ほるぷ出版)があります。通っていた幼稚園でこの本を見つけたんです。この絵本は、幼虫が成長して孵化し、蝶々になるまでの成長過程を感性的に美しく描いた作品です。ストーリーテリングの要素を持つ絵本と、科学本の中間に位置づけられる作品だと思います。

ー影響を受けたイタリアのアーティストについてお話いただきましたが、ご自身の創作において、日本のアーティストからの影響はありますか?

私は9年近く日本で過ごしました。尊敬する日本のアーティストは何人かいますが、日本で暮らし始めた頃に特に注目して研究したのは、グラフィック・デザイナーである河野鷹思(1906-1999)の仕事でした。はっきりとした理由はわかりませんが、河野鷹思のデザインにとても西洋的な雰囲気を感じたんです。芯にあるのは日本の伝統性でありながら、その表現の仕方にヨーロッパ的な要素を強く感じました。その時代の日本のデザイナーは、海外に出て行こうとする強い意識を持っていたのだと感じます。

日本に暮らし始めたばかりの私にとって、彼のデザインは、日本とイタリアをつなぐミディアムのように映りました。それはまるで、日本に来たイタリア人である私のようだったんです。私は、河野の手がけたイメージに助けられながら、イタリアと日本を結ぶ自分自身の表現を模索していきました。ですから、河野鷹思は私にとって師匠のような存在と言えます。



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