「子どもたちにとってなぜ演劇が必要なのか。それは、彼、彼女たちが大好きなのが『物語』だから」〜劇団ラ・バラッカ④〜


芸術との向き合い方の国による違いは子どもたちと教師・保護者との関係に見える~劇団ラ・バラッカ③~

「アートは、見る人々に対してさまざまな感情や考えを誘発する」~劇団ラ・バラッカ➄~
劇団「ラ・バラッカ」は子どものためだけに演劇公演を行う。子どもたちにとってなぜ演劇が必要なのか。子どもたちにとって演劇とは何なのか。俳優兼プログラム・ディレクターであるカルロッタさんに率直な質問をぶつけてみた。
―子どもたちにとって演劇とは何でしょうか?また演劇にとって子どもたちはどんな存在でしょうか?
1才から3才の子どもは、芸術家や大人たちにとって非常に大切な存在です。なぜなら、子どもたちは演劇にとって何が重要かを思い出させてくれるからです。重要なことは、理解することではなく、生きて感じること。そのことを私たちに思い出させてくれます。ラ・バラッカにはセリフのない演目もありますが、言葉やセリフを使う演目もたくさんあります。これらの演目を日本など様々な国で公演したこともありますが、私たちはオリジナルのイタリア語で公演することが多いです。セリフのすべてを翻訳することももちろんできますが、1才から3才の子どもたちにとって、言葉の意味を理解することはさほど重要ではないと考えています。すべてを理解したがるのは大人なのです。私たちの舞台の最後には、いつも質疑応答の時間が設けられています。子どもたちはその時間で何でも質問できますが、内容を「理解」するための質問である必要はないんです。
子どもたちにとってなぜ演劇が必要なのか。それは、彼、彼女たちが大好きなのが「物語」だからです。そして、物語の世界を一番体験できるところが、劇場なのです。親は子どもたちに物語を読みますよね。子どもたちは話を聞くのがとても好きです。そのとき、子どもたちと親の関係は本の中にはなく、一緒に本を体験するその方法にあります。親がそこに一緒にいて、同じ時間を過ごしている、その瞬間です。劇場では、同じ物語でも本ではなく俳優たちがいて、彼らが全身を使って見ている者たちに物語を伝えていきます。重要なのは一緒にその時間を生きることです。絵本でも演劇でも大事なことは同じ。子どもと一緒にそのお話を生きることが大切なんです。
演劇はその始まりから、他の誰かの物語を発見したり、演技を通して他の誰かの人生を体験する機会を提供してきました。私たち大人はいつも「わかってる?」と子どもたちに質問をしますが、子どもたちは俳優が発する言葉だけで観劇しているわけではありません。演劇の空間、身体での表現、そして音楽や照明など、演劇を構成するすべての要素を通じて観劇しているのです。それらを感じることは、子どもたちにとって、とても自然なことなんです。
ラ・バラッカがつくりだす舞台芸術の大きな潮流
近年、ヨーロッパを中心に小さな子どもたちを対象とした舞台芸術に注目が集まっている。5歳以下の小さな子どもたちを対象とした演劇はシアター・フォー・アーリー・イヤーズ(Theatre for Early Years: TEY)とよばれ、ラ・バラッカは1987年の「アクア」の上演以来、TEYの世界をリードしている。ラ・バラッカが中心となって2005年に始まった「スモール・サイズ」という舞台芸術リサーチプロジェクトは、2018年から「マッピング」と名前を変えて、18劇団が参加するEUプロジェクトとなっている。

芸術との向き合い方の国による違いは子どもたちと教師・保護者との関係に見える~劇団ラ・バラッカ③~

「アートは、見る人々に対してさまざまな感情や考えを誘発する」~劇団ラ・バラッカ➄~