「子どもたちを相手に仕事をしたいのなら、まず、子どもたちに注意深く耳を傾ける」~劇団ラ・バラッカ⑥~

「子どもたちを相手に仕事をしたいのなら、まず、子どもたちに注意深く耳を傾ける」~劇団ラ・バラッカ⑥~


劇団「ラ・バラッカ」は、子どもだけを対象に公演活動を行っています。アーリーイヤーズと呼ばれる6歳以下の子どもなどを観客として演劇を公演するうえで、どのような考え方が大事になるのだろうか。イタリア・ジャパン・キッズシアターでは、童話「美女と野獣」をベースに創作された『La Bella o La Besita (美女か野獣か)』の撮りおろし映像(日本語ナレーショ付き)を日本で初めて上映し、出演したファビオ・ガランティさん、ジャーダ・チッコリーニさんへの質疑応答を行いました。

― 舞台の作り方が年齢によって違うんですね。地域の学校との協力もそうですが、観客である子どもたちを深く理解して制作されているんだなと感じました。地域との密接なかかわりあいもすばらしいですね。

G  それから、子ども達を相手とした演劇をする以上、自分自身を見せる正直さ、素直さがとても大事になります。幼い子どもたちは、人を「俳優」や「学者」といった肩書きでは見ないからです。良い発音をしている人だな、とか、素晴らしい動きをしている人だな、といった見方はしないんです。子どもたちは、俳優としての能力どうこうでなく、その人自身として感じ取ります。そして、観客の年齢が下がれば下がるほど、彼らの感じる力は上がると思います。

ー 以前、「子どもたちは観客としてユニークなんだ」とお伺いしたことがあります。改めて、どのような意味でユニークなのか、教えていただけますか?

G  子どもたちはこの世界に新しく参加したばかりの人という意味でとてもユニークです。彼らは接するもののすべてに興味津々ですからね。でも、彼らの人生が短く、経験が少ないから、ちょっとしたことでも驚かすことができると思っているわけではありません。まさにその逆で、彼らは市民であり、感情豊かで、感じる能力の非常に高い人々であり、自分の体験と見たものを結び付けることができます。だからこそ、私たちはいかに質の高い舞台を作れるかを考えています。

子どもたちは、私たちが演技しているまさにその時、自分自身の感情や思考を表現しようとします。何かを私たちに手渡そうとするんです。相手が大人では、こうはいきません。大人の場合、自分が何を考え感じているかを、直接的に表現できないからです。私たちは、子どもたちのための俳優です。子どもたちからフィードバックを受け取ることで、新しいものを創り出すことが可能となります。アーリー・イヤーズと呼ばれる6歳以下の子どもたちを相手に仕事をしたいのなら、まず、子どもたちに注意深く耳を傾ける必要があります。彼らは特別なんです。彼らは日々、あなたをよりよい表現者にしてくれると思います。

― ユネスコでは0歳から8歳をアーリー・チャイルドフッド(幼児期)とし、脳や感情の成長に重要な時期だと言っています。シアター・フォー・アーリー・イヤーズ(TEY)と呼ばれる幼児期に特化した舞台芸術も、教育という観点から重視されているのだろうと感じていました。それも間違ってはいないんでしょうけれど、教育という観点を超えて、子どもたちの観客としてのユニークさが、俳優や演劇の可能性を引き出すという視点はあまり意識できていませんでした。ラ・バラッカは、これまで幼児期への舞台芸術の世界を牽引し、ヨーロッパ全体にまたがるネットワークを作り上げていますね。

G  ラ・バラッカでは、「スモール・サイズ・ネットワーク」という、乳幼児期のための舞台芸術を行うヨーロッパの劇団ネットワークを構築しています。現在このネットワークには、33の国から82団体が参加しています。このネットワークは、2005年からEUの助成を受けて行われた幼児期のための舞台芸術プロジェクト「スモール・サイズ」を起点に生まれたものですが、プロジェクト完了後も、そのネットワークを継続発展させてきました。幼い子どもたちの芸術への権利を尊重し、彼らが芸術を楽しみ、またそれらを体験することで、感性スキルを育むことを目的とするネットワークです。スモール・サイズに代表されるようなヨーロッパの劇団を繋げるためのプロジェクトは、ラ・バラッカの創設者の1人、ロベルト・フラベッティがいつも考え付くんです。劇団のネットワークは、1980年頃から行なっている私たちの海外公演がきっかけで広がっていきました。海外で公演する際に訪れた学校や市町村、またホストとなってくれた劇団や団体との交流や意見交換を、頻繁に行っていました。乳幼児期のための舞台芸術文化を作る仲間を増やすために、行く先々で、みんなを刺激しようとしていたんです。そして、ロベルトがヨーロッパの劇団をつなげるアイデアを思いついたとき、それらの劇団たちはその輪に加わってくれました。

F 現在取り組んでいるヨーロッパを繋ぐ大事なプロジェクトには、「マッピング」があります。これは、0歳から6歳までの乳幼児を対象に、舞台芸術を通じた子どもたちの感覚的な経験の育みについての芸術研究プロジェクトです。

「マッピング」は、EUの産業振興策クリエイティブ・ヨーロッパ(Creative Europe)の助成金を受けています。2018年から今年2022年の、4年間にわたって行われているプロジェクトで、ラ・バラッカが中心となって、ヨーロッパ17か国からの18のパートナーが参加しています。このパートナーには、劇団だけでなく、ダンスカンパニー、劇場、ボローニャブックフェアのような組織も含まれています。芸術分野で幼児と密接に関わりながら活動を行なっている機関と、広くネットワークを持って活動しています。得られた助成金は、すべてのパートナーで共有しています。

ちなみになんですが、このクリエイティブ・ヨーロッパで採択された私たちの提案は、イギリスのテート・ギャラリーによる提案に競り勝ったんですよ!



THEATER – 演劇